蔵目喜町の常徳寺本堂の東側に池泉式鑑賞庭園がある。
園池の広さは南北方向に東側(水の取水口側)約10m、西側(書院側)約15m、東西方向に約21mある。中の島は南北に約8m東西約14mある。
中の島は東側約3分の1は後期に築かれたもので原形は西側の約3分の2である。石組は小振りながら山形石、立石、積石等外形に優れた石材を選んで蓬莱山風に組んである。
池泉の水は町川より導き、水門から中の島の左右に分かれ流れ、池尻より出るようになっている。この水の源流が鍾乳洞から出ることや寺前に舟型石があることなどから宗教的になぞられた池かもしれないといわれる。
往時 後方斜面を築山とみなし、書院(跡)薬師堂(跡)に囲まれた池泉に石組、樹木等を配した風致は申し分なく美しい庭園であったことが想像される。
この庭園の作庭者は雪舟ではないかという伝承記録があり、一方では常徳寺の開創時期(1573〜1591)と雪舟の生年(1420〜1506)の隔絶から否定する記録(風土注進案)もある。
作庭手法が中心から石組に向って右辺に斜線で石の線が流れて、それがそのまま渦を巻いたようになって天に飛翔していく力強い石組の構成を作っている点が雪舟の作庭に迫っているといわれる。特に雪舟にしか見られない傾向(1.石を垂直に構成、2.重ねかけるような石の組み方、3.長い石を護岸石組に使っている。)がある。
作庭者が雪舟であるか否かは兎も角として、庭園の全体構成を概観すると、その作風が傑出しており、卓抜した技術と秀でた感覚の持主の手になった庭園であることには間違いない。
この常徳寺庭園は、室町時代にさかのぼる作庭であり、他に例のない岩盤削り出しの滝石組や築山の独特な作庭技法、鍾乳洞の霊水の取り入れ等が判明し、近世初頭の優れた作庭として価値が認められるとともに、保護のために平成12年12月27日に国指定名勝となった。 |