神楽は神聖なる場所に神座を設けて神を迎え、その前でいろいろな芸能を行うものであるが、民間の神楽には採物(とりもの)神楽、湯立(ゆだて)神楽、獅子神楽、巫女神楽などがある。
採物神楽とは舞人が手に鈴、榊、扇、劔(つるぎ)、弓、幣(へい)などの採物をもって舞う神楽で、素面の採物舞のあとに神々に扮した舞人が神話に取材した一種の能(仮面舞踊)を演ずる。この採物神楽は出雲の佐陀神社の御座替神事における七座の採物舞と神能(仮面の舞)に代表されることから出雲神楽といわれる。
この出雲神楽が広まって石州に入り、石見独特の神楽(俗に石州舞)を形成したといわれる。
土居神楽は石州舞に属するもので大正時代の初期、島根県畑ヶ迫村木毛より講師を招き、積み重ねられて定着したものである。 当時の土居部落青年団が継承し、男子は15〜16才で青年団に入ると舞うことが義務づけられたという。当初15名内外の舞人がいたと記録にあり、部落の鎮守金峰神社、嘉年八幡宮に奉納されていた。
昭和18年、大戦のために中止されたが、戦後復活され、昭和48年「保存会」が結成された。以後、嘉年八幡宮、金峰神社の例祭には必ず奉納され、更に町内の各神社や東京の豊川稲荷神社などに招かれて奉納するなど有名になった。
神楽といえば夜半より夜明けまで舞いつくされるのが普通であったが現在は短時間で打ち切られるようになり、土居神楽も採物(素面)3座と神能(仮面)6〜7座位が演じられ、最後は須佐之男命の八岐の大蛇退治でお仕舞いとなる。
大正から昭和初期までは町内にもいくつかの神楽があったが今は廃れて、土居部落の神楽だけとなった。それだけに貴重な無形文化財といえる。 |